中村文則

石附硝子の本棚 中村文則

時事を語るには認識が薄いところは勘弁して頂きまして、私のまわりには政治の事が大好きな方がいっぱいいます。ま、この歳になって無関心というのでは逆におかしなことですが、「安全保障法案は今すぐ通し、近隣諸国へ威嚇をしなければいけないのだ」とか「戦後70年いまだなめられては困る。日本のあの戦争は決して侵略戦争ではなく、東アジアを西欧諸国から守るための戦争だったのだ」

「さすが安部自民党だ。ばんざ~い」これは少し誇張して付け加えたものですが、すべてが間違いではなくても、本当にそれって正しいの?そんな風に思っていましたら、小説「教団X」の本を読んで胸のつかえがすっきりしました。

 

 たまたま本屋さんで平積みされて、帯に又吉直樹、西加奈子絶賛!の文字が踊り、タイトルも「教団X」謎めいた教えがあるのか、はたまた私は洗脳されてしまうのか、期待と不安を込めて手に取りました。

 

 内容をわたしが語ると、あまりに陳腐になってしまうので、共鳴したところを抜粋してみたいと思います。

 

~ドストエフスキーが言っていることですが、でも人間は一度思想に捕らわれるとなかなか変化しないそうです。理論に理論をぶつけても、その人間が変わるのはごくまれです。~

 

~不満を他国に向かわせて右傾化する。~国が右傾化し、武器産業が儲かる。歴史的にあまりに典型的な、保守国の作り方だよ~

 

~神は人間を殺せとは言わない。それを言うのは神の名を語る詐欺師です。~

 

~我々がしなければならないのは、あの戦死者を英雄としてではなく犠牲者として心から追悼する事です。もちろん、あなた達は英雄である、として戦地に行かせて死なせ、戦後突然、あなた達は犠牲者だったと言うのはひどい話です。~

 

~我々は、平和平和と連呼する。~私達は第二次世界大戦の単純な加害者ではない。原爆と民間人の空襲虐殺などを経験した被害者でもある。私達は加害者であり被害者でもある特殊な経験をした。~スイスが永世中立国なら、日本は平和追及国家になるべきだ。私達がこのオリジナリティを失ったらあの第二次世界大戦で膨大な戦死者の死がそれこそ無駄になるのでは?~

 

 話を切り出して、まとめるのは非常に難しいのですが、ロック歌手の忌野清志郎は1988年反原発の歌をラブミーテンダーをもじって「何言ってんだー」という歌を歌っていました。原子力って、人間が扱ってはいけない領域の物だと学習したばかりなのに、生命よりも経済が勝る世の中。平和ボケだと言われても構わない。平和追及国家になったらいいなと、戦後70周年に思う今日この頃でした。

 

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